白い斑点はチロシンという物質でアミノ酸の結晶体です。生ハムだけでなく、パルミジャーノ・レッジャーノチーズにも同様のチロシンが現れることが良く知られています。たんぱく質中のアミノ酸が分解されることにより旨味成分が増していきますが、そのアミノ酸が乾燥工程で白い結晶として食肉中に現れる現象がチロシンです。特に長期熟成タイプにはチロシンの量が多くなる傾向があります。チロシンは生ハムが良く熟成されている証拠であり美味しさの証です。結晶体が人体に影響を及ぼす事は有りませんので安心してお召し上がり下さい。
この現象は切断面に当たる光の回折によるものが主な原因です。特に加工肉は筋肉が引き締まっているため鋭利な刃物によって筋繊維方向に対して直角にスライスされた際に現れます。また、肉に多く含まれるタンパク等の色素も原因の一つであり、特に鶏肉にも頻繁に起きる現象ですが肉の色素が淡いため目視では気が付きにくいと言えます。何れにせよ自然現象の一つですので、食されても全く問題ありませんので安心してお召し上がり下さい。
弊社がイタリア・スペイン・フランス他南西ヨーロッパから輸入している生ハムは約1年から長いもので3年~4年間の熟成期間を経て出荷される製品となります。
一方、日本市場で一般的に流通している国内製造の生ハムは数週間塩漬され、軽く燻煙・乾燥されて出荷される製品となり、同じ「生ハム」という名称を使用していますが製法も産地も食文化も全く異なる商品のため、味わい、香り、余韻、風味に大きな違いが生じます。
原因の一つは原料となる豚が遺伝的な要因やストレスにより筋肉質にPSE(薄い色、柔らかい、水分の多い)がこり、熟成期間の間にpHが正常に低下しなかったことが原因と考えられています。業界用語ではふけ肉、むれ肉・やけ肉とも呼ばれます。ハム全体の品質に影響を与えるものではありませんので、該当部分を除去いただければご使用いただけますが、影響範囲が全体に及ぼしている場合、または判断が難しいようでしたら各営業担当者までお問合せ下さい。その際はお手数ですが現物画像及び現物の送付をお願いいたします。
固さや味わいのバラツキが生じないよう、出来るだけ原料の大きさを統一し原料重量により塩加減を微調整しながら製造をしていますが、生き物である以上、豚個体の肉質及び脂・筋肉の割合、塩の浸透率、熟成促進の度合いにより硬さや味わいに差が生じることは完全には避けられません。また、ハムの部位によっても味わい・風味に大きな違いが生じます。弊社は画一化された現代的な製品ではなく、古代から続く伝統的製法で造られた食材を主に取り扱っております。個体差を見極め、部位ごとにスライス厚を変えていただき異なる味わい・食感・風味を楽しむのも伝統食材を扱う面白さだと私たちは考えております。もし明らかに個体差では説明がつかないと感じられた場合は、各営業担当者までお問い合せ下さい。
毛については仕込みの段階で取り除くようにしておりますが、特にイベリコやサンダニエーレなど蹄つきで熟成・出荷する場合、表皮に生えている毛を全て取り除くことが困難な個所には一部毛が残っていることがございます。原料由来のため、大変恐縮ですが提供時に毛が混入しないようお客様(レストラン様側)の方で工夫いただくようお願いいたします。
一部の報道機関により、生ハムによる妊婦へのトキソプラズマ感染とリステリア症の危険性が指摘されました。パルマハム協会はこの件に関して生の豚肉を食した場合の危険性はあるが、加工された生ハムを食した場合のトキソプラズマ感染の危険性はないと報告しています。生ハムは生産過程の中で冷却期間があるなど、危険性を低くする要素がありますが、念のため妊婦は避けたほうが良いとされています。
一方でリステリアによる食中毒に関しては、注意が必要です。
食品由来のリステリア症は年間100万人あたり0.1人~10人あたりとまれですが、重症化するときわめて危険な状態になります。4℃以下の低温や12%食塩濃度下でも増殖します。我々も商品に関してはリステリアの菌数を定期的に検査し、問題がないか確認をしております。しかし、厚生労働省からは妊婦、高齢者や免疫機能が低下している方(抗がん剤治療中やHIVエイズの方など)は少量のリステリアでも発症し、敗血症や髄膜炎など重篤な状態(リステリア症)になることがあると指摘されています。上記理由により念のため妊娠中は生ハムを食すのを控えて頂くことをおすすめ致します。
「賞味期限」とは、定められた方法により保存した場合において、期待されるすべての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日のことです。 ただし、当該期限を超えた場合であってもこれらの品質が保持されていることがありますが、出荷後の商品個々の保管条件は異なり、時間の経過とともに風味は徐々に劣化するため、使用はお勧め出来ないことご理解ください。
生ハム・サラミが分類される「非加熱食肉製品」ですが、輸入時に食品衛生法で定められている微生物規格の必須検査項目は『大腸菌(E.coli)』『黄色ブドウ球菌』『サルモネラ属菌』『リステリア・モノサイトゲネス』の4項目となり、その検査結果をもって食品衛生法に基づく食肉製品の微生物規格基準を満たすため、基本的に「一般生菌数」の検査は実施しておりません。
保健所の検査項目も発酵及び熟成によって作られた食品(生ハム・パン・チーズ等)については一般生菌数が元来多い製品のため検査項目から除くことが一般的です。
その為、検査をした場合には一般生菌数は非常に高い数値を示しますが。これは商品の特性上のものであり、すなわち数値の高さが安全性を損なうデータの基準とはならないことをご理解下さい。
室温に戻していただくとハムの脂がうっすらと溶け始め、香り・風味が一段と上がります。トロっとした口溶けと芳しい熟成香をより一層お楽しみいただけます。スライスパックであれば提供の5分前、原木であれば遅くとも提供の1時間前には常温に戻しておくことをおすすめ致します。