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情熱の解し方 ~ポルチーニ茸~ 

情熱の解し方 ~ポルチーニ茸~  イメージ

日本が「美食の国」と言われて久しいですが、この称号はヨーロッパでは伝統的にフランスとされています。彼らは世界中の美味いものを集め、調理できる技術を持ち合わせてきました。 一方、ヨーロッパで「美味しいものを育む国」がイタリアであることに異論のある人は少ないでしょう。

生ハム、サラミ、チーズ、ワイン、より多くの原産地呼称を保有するのはイタリアであり、その伝統、製法などに注がれるイタリア人情熱は並々ならぬものがあります。

そんなイタリア人が、同じように情熱を注いだ来てきたのは、ポルチーニ茸。「キノコの王様」とも称されるポルチーニ茸は、イグチ科のキノコで、ほとんどはマツタケやトリュフ同様樹木の根に菌根を作って共生する菌根菌です。このため純粋培養による栽培は非常に困難であり未だに成功していません。ですから現在流通するポルチーニ茸は全て森林で採集された天然物ということになります。しかし残念なことにヨーロッパでは酸性雨などの環境破壊で森林の衰退が進み、菌根菌の発生量が減少してきました。

ポルチーニ茸の味の決め手となるのは育つ環境です。ポルチーニは水を主成分とし、菌糸によって形成されてます。この菌糸は樹木の根と共生し、両者がお互いに助け合って共同生活を営んでいます。ですから、ポルチーニ茸の質の良し悪しは生息する森林環境が大変重要となるのです。とかくイタリア産が良質と言われますが、実際は東欧など、比較的健全な環境が維持されているエリア産のものの方が、良質であることの方が多いのも事実です。収穫地を厳選し、森林の環境にこだわることこそが、よいキノコ類、とりわけポルチーニ茸の品質の決め手になるというわけです。

秋の旬の時期でさえ入手困難なこのキノコに対するイタリア人の情熱は、それを得ることに注がれるのみならず、本来秋の味覚であった食材を通年楽しみたい欲求にとらわれ続けれてきました。この欲求は「保存技術の革新」という新たな情熱へ変換され、現在では乾燥ポルチーニや冷凍ポルチーニが楽しめるようになり、そして遠く日本においても容易に提供されるようになったわけです。
マツタケ、シイタケ、シメジにエノキと日本人も無類のキノコ好き。イタリア人のポルチーニ茸への情熱を最も理解できるのは、日本人なのかも知れませんね。

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